毎日当たり前のように行っている歯磨きですが、「正しいやり方」を改めて確認したことがある方は意外と少ないのではないでしょうか。実は、自己流の歯磨きでは磨き残しが多くなりがちで、虫歯や歯周病のリスクを十分に下げられていないケースが少なくありません。
歯科医院で「磨き方が間違っています」と指摘されて驚いた経験がある方もいるかもしれません。正しい歯磨きの方法を知り、実践するだけで口腔内の健康状態は大きく変わります。
この記事では、歯科医師や歯科衛生士が推奨する歯磨きの正しいやり方を、基本テクニックからブラシの選び方、補助用具の使い方まで網羅的に解説します。今日から実践できる内容ですので、ぜひ最後まで読んでみてください。
なぜ正しい歯磨きが重要なのか
口腔内には約700種類もの細菌が存在すると言われています。これらの細菌が食べかすをエサにして繁殖し、歯垢(プラーク)を形成します。歯垢は虫歯や歯周病の直接的な原因となるため、毎日の歯磨きでしっかり除去することが重要です。
しかし、日本歯科医師会の調査によると、歯磨きをしている人でも約80%は磨き残しがあるとされています。特に磨き残しが多い箇所は、歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目、奥歯の噛み合わせ面です。
正しい歯磨きを身につけることは、虫歯や歯周病の予防だけでなく、口臭予防、さらには全身の健康維持にもつながります。歯周病菌が血流に入り込むことで、糖尿病や心疾患のリスクが高まるという研究報告もあります。

歯磨きの基本テクニック3種類
歯科医療の現場で推奨されている代表的なブラッシング法を3つ紹介します。それぞれ特徴があるため、自分の口腔内の状態に合った方法を選びましょう。
バス法(歯周病予防に最適)
バス法は歯周病予防に最も効果的とされるブラッシング法です。歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に45度の角度で当て、小刻みに振動させるように動かします。
・歯ブラシを歯の表面に対して45度の角度で歯ぐきに向けて当てる
・毛先が歯周ポケットに入り込むようにする
・1〜2本の歯を対象に、小刻みに横方向に振動させる(幅は約1〜2mm)
・強い力を入れず、軽い圧で行う
バス法は歯周ポケット内の歯垢を除去するのに優れていますが、力加減が難しいため、歯科衛生士に指導を受けてから実践するのがおすすめです。
スクラッビング法(一般的で簡単)
スクラッビング法は最も広く推奨されているブラッシング法で、初心者にも実践しやすい方法です。
・歯ブラシの毛先を歯の表面に対して直角(90度)に当てる
・小刻みに横方向に動かす(幅は約5〜10mm)
・1〜2本の歯ずつ丁寧に磨く
・歯の裏側は歯ブラシを縦にして、毛先を上下に動かす
フォーンズ法(子ども向け)
フォーンズ法は、歯ブラシを歯の表面に当てて円を描くように動かす方法です。特に子どもや手先の器用さに自信がない方に向いています。ただし、歯と歯の間の清掃効果はやや低いため、デンタルフロスとの併用が推奨されます。
・歯周病が気になる方 → バス法
・一般的な虫歯予防 → スクラッビング法
・お子さんや初心者 → フォーンズ法
※どの方法でも、1箇所あたり20回程度の往復を目安にしましょう
どのブラッシング法でも、歯と歯の間は歯ブラシだけでは届きにくいため、デンタルフロスを手元に用意しておくと便利です。
磨き残しを防ぐ順番のコツ
歯磨きの磨き残しを減らすためには、磨く順番を決めておくことが非常に効果的です。歯磨き後のフロスの使い方は以下の記事で紹介しています。

おすすめの磨き順
1. 奥歯の噛み合わせ面
最も磨き忘れが多い箇所のひとつです。最初に磨くことで確実にケアできます。
2. 歯の裏側(舌側・口蓋側)
歯の裏側は見えにくいため磨き残しが発生しやすい部分です。歯ブラシを縦に持ち、毛先を歯に当てて上下に動かします。
3. 歯の表側(唇側・頬側)
歯の表側は比較的磨きやすいですが、歯と歯ぐきの境目を意識して丁寧に磨きましょう。
4. 前歯の裏側
前歯の裏側はブラシを縦に持ち替えて、毛先のかかと部分を使って1本ずつ磨きます。
毎回同じ順番で磨くことを習慣にすると、磨き忘れが格段に減ります。右上の奥歯から時計回りに一周するなど、自分なりのルートを決めておきましょう。


歯ブラシの正しい選び方
ブラッシングの効果を最大限に引き出すためには、自分に合った歯ブラシを選ぶことも重要です。
毛の硬さ
歯ブラシの毛の硬さは「やわらかめ」「ふつう」「かため」の3種類が一般的です。歯周病が気になる方や歯ぐきから出血しやすい方は「やわらかめ」を選びましょう。一般的には「ふつう」が最もバランスが良いとされています。「かため」は歯垢除去力は高いですが、歯ぐきを傷つけやすいため注意が必要です。
ヘッドの大きさ
ヘッドが小さめの歯ブラシのほうが、奥歯の奥や歯の裏側など細かい部分に毛先が届きやすいため、磨き残しを減らせます。目安として、上の前歯2本分程度の幅が適切です。
毛先の形状
毛先がラウンドカットされたものは歯面の歯垢除去に適しており、テーパードカット(先細り)のものは歯周ポケットや歯と歯の間のケアに効果的です。
交換のタイミング
歯ブラシは1ヶ月に1回を目安に交換しましょう。毛先が開いた歯ブラシは歯垢除去力が約40%低下するとされています。ブラシの裏側から見て毛先がはみ出していたら、交換のサインです。
補助用具を活用しよう
歯ブラシだけでは歯の表面の約60%しか清掃できないと言われています。残りの約40%をカバーするために、補助用具の活用が推奨されます。
デンタルフロス
歯と歯の間の歯垢を除去するのに最も効果的な用具です。使い方は以下のとおりです。
・約40cmのフロスを切り取り、両手の中指に巻きつける
・歯と歯の間にゆっくりと挿入する
・歯の側面に沿わせてC字型にし、上下に動かして歯垢を除去する
・隣り合う両方の歯の側面をそれぞれ清掃する
歯間ブラシ
歯と歯の間の隙間が広い方やブリッジの下部の清掃に適しています。サイズはSSS〜Lまでさまざまあるため、自分の歯間に合ったサイズを選びましょう。無理に入れると歯ぐきを傷つけるため、スムーズに入るサイズを選ぶことがポイントです。
ワンタフトブラシ
毛束が1つだけの小さなブラシで、奥歯の裏側や矯正装置の周囲、親知らず周辺など、通常の歯ブラシでは届きにくい部分のピンポイント清掃に活用できます。
舌ブラシ
口臭の原因の約60%は舌苔(舌の表面に付着した細菌や食べかすの膜)にあるとされています。舌ブラシを使って優しく舌の表面を清掃することで、口臭予防に効果があります。奥から手前に向かって軽くなでるように使いましょう。


やってしまいがちなNG歯磨き習慣
正しい歯磨きを実践するために、よくあるNG習慣も確認しておきましょう。
力を入れすぎている
「しっかり磨きたい」という気持ちから力を入れてゴシゴシ磨く方がいますが、力の入れすぎはエナメル質の摩耗や歯ぐきの退縮を引き起こします。歯ブラシの毛先が広がらない程度の軽い力(150〜200g程度)で磨くのが適切です。
磨く時間が短すぎる
一般的に推奨されている歯磨き時間は最低2分間です。しかし実際には、多くの人が1分以下で終わらせてしまっているという調査結果があります。タイマーを使ったり、電動歯ブラシの2分タイマー機能を活用したりして、適切な時間を確保しましょう。
大きなストロークで磨いている
歯ブラシを大きく動かすと、歯と歯の間や歯周ポケットに毛先が届かず、磨き残しが増えます。1〜2本の歯を対象に、小刻みに動かすことを意識しましょう。
すすぎすぎている
歯磨き後に何度も口をすすぐと、フッ素が流れ出てしまい、虫歯予防効果が低下します。すすぎは少量の水(約15ml)で1〜2回にとどめるのが推奨されています。
歯ぐきから出血がある場合でも、歯磨きをやめてはいけません。出血は歯ぐきの炎症のサインであり、正しいブラッシングを続けることで改善していきます。ただし、出血が長期間続く場合は歯周病が進行している可能性があるため、歯科医院を受診しましょう。
電動歯ブラシと手磨き、どっちがいい?
電動歯ブラシと手磨きのどちらがよいかは、よくある質問のひとつです。結論から言えば、正しい使い方をすればどちらでも十分な効果が得られます。
電動歯ブラシのメリットは、一定の振動で効率的に歯垢を除去できる点です。手磨きが苦手な方や、力加減が難しい方には特におすすめです。一方で、電動歯ブラシに頼りきると「当てるだけ」の磨き方になり、歯と歯の間のケアがおろそかになることがあります。
いずれにしても、デンタルフロスや歯間ブラシとの併用は必須です。どちらを使う場合でも、補助用具を組み合わせることが口腔内の健康維持の鍵となります。
参考リンク:日本歯科医師会 テーマパーク8020
参考リンク:日本臨床歯周病学会
参考リンク:厚生労働省 e-ヘルスネット(現在は厚生労働省 健康日本21アクション支援システムに統合)




