歯科治療で「この治療は保険が使えますか?」と気になることは多いですよね。歯科治療にはさまざまな種類がありますが、すべてが保険適用になるわけではありません。保険が使える治療と使えない治療の線引きを知っておくことで、費用面での不安を解消できます。
日本の公的医療保険では、歯科治療の多くの部分がカバーされています。虫歯の治療、歯周病の治療、抜歯、入れ歯の作成など、基本的な治療は保険の範囲内で受けることが可能です。
この記事では、歯科治療における保険適用の範囲を治療の種類ごとにわかりやすく整理し、保険が使えないケースや、近年の保険適用拡大についても詳しく解説していきます。歯科治療を受ける前の予備知識として、ぜひ活用してください。
歯科の保険診療の基本ルール
まず、歯科の保険診療がどのような仕組みで成り立っているのか、基本的なルールを押さえておきましょう。
日本の健康保険制度において、歯科治療は「疾患の治療」を目的とするものが保険適用の対象となります。つまり、病気やケガを治すための治療は保険が使えますが、見た目を美しくする目的の治療は原則として保険適用外となります。
保険診療の自己負担割合は以下のとおりです。
・69歳以下:3割負担
・70〜74歳:2割負担(現役並み所得者は3割)
・75歳以上:1割負担(現役並み所得者は3割)
また、保険診療で使用できる素材や技術は厚生労働省が定めており、保険診療報酬点数表によって治療ごとの費用が全国統一で決められています。

保険適用される歯科治療一覧
保険が適用される主な歯科治療を、カテゴリー別にまとめました。
虫歯治療
虫歯の治療は歯科治療の中で最も基本的な保険適用対象です。
コンポジットレジン充填:小さな虫歯の場合、虫歯を削った部分に白いプラスチック素材(コンポジットレジン)を詰める治療です。前歯から奥歯まで保険で白い詰め物が可能で、1本あたりの自己負担は数百円〜2,000円程度です。
メタルインレー(銀歯の詰め物):比較的大きな虫歯の場合、型を取って金属の詰め物を作ります。自己負担は1本あたり2,000〜3,000円程度です。
メタルクラウン(銀歯の被せ物):虫歯が大きく歯の大部分を失った場合に、金属の被せ物を装着します。自己負担は1本あたり3,000〜5,000円程度です。
CAD/CAM冠:コンピューターで設計・製作される白い被せ物です。以前は適用範囲が限られていましたが、段階的に保険適用が拡大され、前歯から大臼歯まで幅広く対応可能になっています。2024年6月の改定で第二大臼歯まで条件付きで拡大され、2026年6月からは咬合支持の要件が撤廃されてすべての大臼歯に適用されます。
根管治療(神経の治療):虫歯が神経にまで達した場合に行われる治療で、保険適用です。根管内の感染した神経や細菌を除去し、薬剤を充填します。
歯周病治療
歯周病の治療も基本的に保険適用です。
歯石除去(スケーリング):歯の表面に付着した歯石を除去する治療です。定期的なクリーニングとして保険で受けることができます。
SRP(スケーリング・ルートプレーニング):歯周ポケットの深い部分の歯石や汚染物質を除去する治療です。歯周病の中等度以上の場合に行われます。
歯周外科手術:重度の歯周病に対して行われる手術で、フラップ手術(歯茎を開いて深部の歯石を除去する手術)などが保険適用です。
歯周病治療を保険で受ける場合、段階的に治療を進める必要があります。いきなり外科手術を行うのではなく、まずは検査→歯石除去→再検査→必要に応じてSRPや手術、という流れが保険のルールで定められています。
抜歯・外科処置
抜歯:通常の抜歯から、親知らずの難抜歯まで保険適用です。親知らずの抜歯は難易度によって費用が異なりますが、自己負担は1本あたり1,000〜5,000円程度が目安です。セラミック歯など自費治療の費用相場は以下の記事で解説しています。

歯根端切除術:根管治療では改善しない場合に、歯根の先端を外科的に切除する手術です。保険適用で受けられます。
口腔外科的処置:嚢胞(のうほう)の摘出、口腔内の小手術なども保険適用の対象です。
入れ歯(義歯)
部分入れ歯:残っている歯に金属のバネ(クラスプ)をかけて固定するタイプの入れ歯が保険で作れます。プラスチック(レジン)製で、自己負担は5,000〜15,000円程度です。
総入れ歯:すべての歯を失った場合の総入れ歯も保険適用です。プラスチック製で、自己負担は10,000〜15,000円程度です。
その他の保険適用治療
フッ素塗布:初期虫歯の治療や予防処置として、保険適用で受けられるケースがあります。
ブリッジ:欠損した歯の両隣の歯を支台にして、人工の歯を橋渡しする治療です。保険ではメタルフレームのブリッジが作れます。前歯部分には保険でも白い素材が使われます。
レントゲン検査:パノラマレントゲンやデンタルレントゲンなどの画像検査は保険適用です。


保険適用外(自費)の歯科治療一覧
次に、保険が適用されず自費診療となる主な治療を確認しておきましょう。
インプラント
人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に被せ物を装着する治療です。天然歯に近い噛み心地と見た目を実現できる優れた治療法ですが、保険適用外です。1本あたり30〜50万円程度が相場です。ただし、先天的な疾患や事故による広範囲の欠損など、一部の条件下では保険適用になるケースもあります。
セラミック治療
オールセラミックやジルコニアなどの高品質な素材を使った被せ物・詰め物は自費診療です。天然歯に近い色調や透明感を再現でき、変色もしにくいですが、1本あたり5〜15万円程度の費用がかかります。
歯科矯正
歯並びや噛み合わせを改善する矯正治療は、原則として保険適用外です。ワイヤー矯正で60〜100万円、マウスピース矯正で30〜80万円程度が一般的です。ただし、顎変形症や先天性の疾患に起因する不正咬合については保険適用になる場合があります。
ホワイトニング
歯を白くするホワイトニングは美容目的のため、保険適用外です。オフィスホワイトニングで1回1〜5万円、ホームホワイトニングで2〜5万円程度が相場です。
金属床義歯・ノンクラスプデンチャー
保険の入れ歯よりも薄くて快適な金属フレームの入れ歯や、金属バネのない審美的な入れ歯は自費診療です。15〜50万円程度の費用がかかります。
歯のクリーニング(PMTC)
予防を目的としたプロフェッショナルクリーニングは、保険適用のケースと自費になるケースがあります。歯周病の治療の一環として行う場合は保険適用ですが、予防や審美目的のみの場合は自費となることがあります。
保険適用の範囲は定期的に見直しが行われており、以前は自費だった治療が保険で受けられるようになるケースもあります。CAD/CAM冠の適用拡大がその代表例です。最新の情報は歯科医院に直接確認するのが確実です。
近年の保険適用拡大の動き
歯科治療の保険適用範囲は、近年少しずつ拡大してきています。主な変更点をご紹介します。
CAD/CAM冠の適用範囲拡大
コンピューターで設計・製作するCAD/CAM冠は、当初は小臼歯のみの適用でしたが、段階的に適用範囲が拡大されました。2024年6月の改定で第二大臼歯まで条件付きで拡大され、2026年6月からは咬合支持の要件が撤廃されて、前歯から奥歯まですべての永久歯で保険適用が可能になります。
CAD/CAMインレーの保険導入
被せ物だけでなく、詰め物(インレー)についてもCAD/CAMでの製作が保険適用されるようになりました。奥歯の銀歯の詰め物に抵抗がある方にとっては、うれしい変更です。
歯周組織再生療法の保険適用
歯周病で失われた骨を再生させる治療の一部が保険適用になっています。リグロスなどの歯周組織再生材を用いた治療が保険で受けられるようになりました。


高額療養費制度と歯科治療
保険適用の歯科治療で医療費が高額になった場合、高額療養費制度が利用できることをご存知でしょうか。
高額療養費制度とは、1ヶ月の医療費の自己負担額が上限を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。歯科治療でも、保険診療の範囲内であれば適用されます。
親知らずの難抜歯が複数本あるケースや、歯周外科手術を受けるケースなどでは、1ヶ月の医療費が高額になることがあります。そのような場合は、高額療養費制度の対象になる可能性がありますので、加入している健康保険組合や市区町村に確認してみてください。
ただし、自費診療の部分は高額療養費制度の対象外です。また、歯科と医科の医療費は合算できるため、同じ月に他の病院で高額な治療を受けた場合も合わせて申請できます。
保険診療を上手に活用するためのポイント
保険診療を最大限に活用するためのポイントをまとめます。
1. 定期検診で早期発見・早期治療:虫歯や歯周病を早期に発見できれば、治療の範囲が小さくて済み、費用も抑えられます。3〜6ヶ月ごとの定期検診は保険で受けられるため、積極的に活用しましょう。
2. CAD/CAM冠の適用条件を確認する:白い被せ物を保険で入れたい場合は、担当医にCAD/CAM冠の適用が可能かどうか相談してみてください。金属アレルギーがある方は適用範囲がさらに広がるケースがあります。
3. 治療計画を事前に確認する:治療を始める前に、どこまでが保険適用でどこからが自費になるのか、費用の見通しを確認しておきましょう。不明点があれば遠慮なく質問してください。
4. 医療費の領収書を保管する:確定申告で医療費控除を受けるために、歯科治療の領収書は必ず保管しておきましょう。通院のための交通費も控除の対象になる場合があります。
よくある質問(Q&A)
Q. 歯科検診(定期検診)は保険が使えますか?
A. 症状があって受診する場合や、歯周病の管理として行う定期検診は保険適用です。ただし、完全に「予防目的のみ」の検診は保険適用外となるケースもあります。多くの場合、歯周病検査と合わせて保険で受けられますので、歯科医院に確認してみてください。
Q. 親知らずの抜歯は保険で受けられますか?
A. はい、親知らずの抜歯は保険適用です。ただし、抜歯の難易度(まっすぐ生えているか、横向きか、骨に埋まっているかなど)によって費用は異なります。埋伏した親知らずの場合、自己負担は3,000〜5,000円程度になることが一般的です。
Q. 歯のクリーニングは保険適用ですか?
A. 歯周病の治療として行う歯石除去やクリーニングは保険適用です。ただし、保険のルールとして歯周病検査を先に行う必要があります。着色除去(ステイン除去)のみを目的とする場合は自費になることがあります。
Q. 保険の銀歯は体に悪いですか?
A. 保険で使われる金銀パラジウム合金は長年使用されてきた実績があり、安全性は確認されています。ただし、まれに金属アレルギーを引き起こすケースがあります。アレルギーの症状がある方は、パッチテストで確認した上で金属フリーの素材を選択することをおすすめします。
Q. 保険と自費を混ぜて治療することはできますか?
A. 原則として、同一の治療行為について保険と自費を混合すること(混合診療)は認められていません。ただし、保険で治療した歯に後から自費の被せ物を入れるなど、治療が分離できるケースでは対応可能な場合もあります。詳しくは担当医に相談してください。
歯科治療の保険適用範囲は毎年のように改定が行われています。最新の情報は、厚生労働省の医療保険制度ページで確認できます。また、日本歯科医師会(日本歯科医師会公式サイト)でも歯科治療に関するさまざまな情報が提供されていますので、ぜひ参考にしてください。



